地下鉄に乗って 浅田次郎 講談社文庫 2005.8.29 完読 2005/08/30 22:08

☆☆☆☆
初浅田作品。
感想…とてもせつな過ぎる。

小説の形態は(というのでしょうか?)地下鉄を取り巻くタイムスリップ。

どんどん父に似てくると他から言われて、そんなわけ無いと反抗してみる真次。父との諍いから自殺した兄の命日に地下鉄で帰る途中に、兄の自殺した少し前の時刻にタイムスリップしてしまう。「もしかしたら兄を助けることができるかも知れない」と思った真次は兄を探し、おじさんのふりをして家まで送り届けるが未来は変わってはいなかった。

これを境にどんどん過去に自分が望んでもいないのにタイムスリップしてしまう。不倫相手のみち子まで巻き込んで…そして知りたくも無かった真実を知ってしまう。


 初めのうちは兄の自殺の真実を解明し、未来を変えてしまっていろいろな難題や良い事が起こるのかな?とちょっと楽観視していたけれどそんな簡単な物語ではなかった!

 成り上がりの父に似てきたと言われ、すごく嫌なのにタイムスリップした場所で使命感のように父の生きてきた時代で生身の父の姿を探し尋ねる。

 本当の父の姿を、誰の意向で苦しいことまで知りながら自分に見せてくれたのだろう。

 結局、タイムスリップして未来に起きたことが変わった事といえば一つだけ。
 それは悲しすぎる、きっと私ならできない。

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じゅりん > three bellsさん、はじめまして♪私はこれを読んで号泣しました!これは父と子の和解の物語でもあるのでしょうけど、読み終わったとき、ああこれは真次とみち子の愛の物語だったんだと思いました。本当にせつない大人のファンタジーでした。。ずいぶん前に読んだのですが、今思い出しても涙が出そうです。 (2005/08/31 08:06)
three bells > じゅりんさんはじめまして!父と子、特に同姓同士は永遠にライバルであり、一番近い存在なのでしょうか。真次が「父のように生きていく」とのっぺい先生に言った時そう思いました。真次とみち子。不倫は嫌いな私ですが、不倫なんていう言葉でくくってあげたくないです。 (2005/08/31 17:44)
three bells > ↑同姓→同性の間違いです… (2005/08/31 17:45)
nanao > いろいろ考えさせられました。
誰の意向で見せられたのでしょうね。
でも見せられなかったら、父親への思いは負のままだったでしょうね。 (2005/08/31 18:30)
three bells > nanaoさん、やっぱり私はお兄さんが見せたように思います。父との諍いがあるにせよ、父を一番尊敬していたのは兄だったと思うし、その父と自分の本当のことがショックで自殺してしまったのだろうから。みち子とのことも本気で考えかけていて、そんな真次に今の生活も悪くはないんだと確認させてやりたかったのかもと…。
でも考えたら、父の過去の人生に必ず真次が現れていて、もうこうなる事は決まっていた、真次の未来に組み込まれていたのかもしれません。この事が無かったら父の事認められてないでしょうね。それは、父も自分の口から大変な苦労を語るつもりもないだろうし、強い意地が無いと要領が悪かった父にも幸運は味方しなかったでしょうね。 (2005/08/31 21:41)